立命館大学地域共創プロデューサー育成プログラム・舞鶴市共催シンポジウムの報告

1. シンポジウムの概要

2009年12月12日(土)に、舞鶴市商工観光センターにおいて、本学地域共創プロデューサー育成プログラムと舞鶴市の共催による『「地域共創(ともにつくる)」社会を目指して 地域が主役! -身近なグリーンエコノミーの可能性を考える-』と題したシンポジウムが開催され、本学大学院生や地域住民ら60余名が参加しました。

シンポジウムは、まず舞鶴市長齋藤彰氏による開会の挨拶から始まり、変化の早い現代における市民と行政の協力の必要性について述べられました。次に、舞鶴市が地域社会の担い手を育成するためにこれまでに行ってきた『市民の学びと実践』連続講座のファシリテイターから、本講座を通じて得た地域の課題とその解決、主体ごとの役割、そして今後の展望について報告がありました。続いて地域共創の三つの取組事例が紹介されました。ここでは、地域住民による活動、その活動に対する地域での話し合い、そして地域活動を円滑に推進する仕組みと連携について報告が行われました。さらに、『地域発!エコ・ビジネスの可能性』をテーマとするパネルディスカッションにおいて、地域活動に従事している3名のパネリストからの報告、コーディネーター及び会場との質疑応答が行われました。そこでは、市民と行政の協力、地域における各主体の役割分担と連携などに加え、地域に住む人々自らが地域について考え、行動していくことの重要性が語られました。最後に閉会の挨拶として、見上崇洋教授(学校法人立命館副理事長)より、地域住民、行政、大学という三者の地域主体とその役割分担、自ら地域を知ることの大切さ、地域活動の展開とその可能性が指摘され、地域共創の次なる姿を展望して終えました。

2. 開会挨拶

当日の様子

齋藤彰舞鶴市長から、変化の早い現代社会において行政は転換点を迎えており、今後は市民の英知を行政の中に活かしていくことが欠かせないことが述べられました。その一例として、筍を守るために竹を活用して有害鳥獣を防除するという市民の実践が紹介されました。このような市民の英知による活動を広げていくためにも、『市民の学びと実践』連続講座開催などの行政による支援を行い、市民と行政の協力を押し進めていきたい旨を述べられました。

3. 『市民の学びと実践』連続講座の報告

当日の様子

本連続講座は舞鶴市民を対象とし、本年5月から11月にかけて安全学基礎コースと環境学基礎コースに分けて開催されました。本連続講座は多様な知識の習得を目的とし、参加者はワークショップを通じて学習を深めるとともに、地域の課題について検討しました。

安全学基礎コースの参加者による学習の成果について、本コースのファシリテイターを務めた白石陽子地域共創モデレーターから報告がありました。参加者から、自然、地域、子供、交通安全、高齢化、職場といった6分野にわたる課題が抽出されました。中でも人間関係の希薄化を原因とした課題が多く、地域活動でもこの人間関係を再構築する試みが行われていることがわかりました。そして、これらの課題に対して個人、地域、行政による役割分担と協働のあり方について今後の課題として挙げられました。

当日の様子

一方、環境学基礎コースの参加者による学習の成果について、本コースのファシリテイターを務めた大西学地域共創モデレーターからの報告がありました。参加者から、課題分野として、エネルギー、国際、産業・鉛、山林、ゴミ、食品、河川・海、地域が挙げられ、それぞれについて解決策や緩和の方向性が検討されました。そのキーポイントとして、地域において課題を話し合い、新しいライフスタイルを創出し、世界に発信しながら豊かな地域の方向性を照らし出す道筋がまとめとして紹介されました。

これらの報告を踏まえて森裕之教授(立命館大学政策科学部)から、地域の各主体がそれぞれの強みを活かして役割を分担し、連携していくこと、そして本連続講座の成果をベースにして、世界に発信できる舞鶴モデルを構築することについて期待が示されました。

当日の様子

4. 地域共創の取組事例の報告

当日の様子

地域共創の取組事例として、ふるさと大浦21会長岸英一氏、地域共創准研究員鬼頭妙(立命館大学公務研究科修士課程)・御手洗貴弘(同大学政策科学研究科博士課程前期課程)の両氏からの報告がありました。

岸英一氏から、ふるさと大浦21の活動内容について、2003年より舞鶴市大浦地区の自然を満喫できる農漁村体験イベントを催していること、竹林の多い舞鶴市の特徴を活かして竹炭を作成、販売していることなどの紹介がありました。今後は廃竹材の粉砕機を導入し、竹パウダーの利用にも活動を広げていくことを述べられました。

当日の様子

鬼頭妙氏からは、亀岡市篠町における「あいあいネットワーク」という高齢者に対する見守り、声かけ、ビラの手渡し活動について報告がありました。この活動によって、日常における会話のきっかけが増えたこと、高齢者に対する見守りが重層的になり、個別の負担が緩和されたことが紹介されました。一方で、このような活動に対して義務感や負担感、高齢者自身からの抵抗感、ビラの手渡しに対する煩わしさといった意識が表われていることも指摘されました。今後は、地区ごとに住民の間で地域と向き合う姿勢を共有し、各地区に応じた、支え合い、助け合いに繋げていくことへの期待が示されました。

当日の様子

御手洗貴弘氏からは、南信州地域におけるレジ袋削減運動についての報告がありました。この運動により南信州地域のレジ袋辞退率が大幅に高まったこと、その背景に事業者が参加しやすい環境を行政が整えたこと、地域の店舗が足並みを揃えたこと、消費者がマイバックを持っていく習慣を構築できたこと、長年の環境学習の成果があったこと、などが挙げられました。

5. パネルディスカッション『地域発!エコ・ビジネスの可能性』

当日の様子

まず、コーディネーターである小幡範雄教授(立命館大学政策科学部)より、循環型社会を目指すわが国において、環境を保全しつつ、経済発展に貢献する地域の道筋について、課題の提起がありました。これに対して、田中秀門氏(亀岡市市民協働課係長)、西岡力氏(NPO法人八幡たけくらぶ理事長)、曽我千代子氏(サークル加茂女会長代行)の3名のパネリストが応答しました。

まず田中秀門氏から、バイオマス炭化物を田畑への土壌改良材として活用した炭素隔離と貯蔵、その田畑で栽培した農作物をクールベジタブルと名付けての販売実験、独自のエコポイント制度の設立構想について紹介がありました。既にバイオマス炭化物は土壌埋設の実験中であり、クールベジタブルも2010年1月には販売を開始し、環境に配慮した製品に対する消費者の反応を確かめる段階にあり、活動が徐々に実験段階から試行段階に移り始めていることを述べられました。

当日の様子

つぎに西岡力氏から、八幡たけくらぶが地域のシンボルである男山の放置竹林を整備するボランティアグループとして設立されたこと、外部団体からの助成金を得て現在では竹林整備の他、竹細工、廃竹材の粉砕活動、その他会員同士の交流活動まで広がっていること、そして2009年2月にNPO法人として認可されたことについての説明がありました。また毎月の活動方針を伝える「たけくらぶ通信」をWeb上で発刊するなど積極的に情報発信を行っていることも紹介されました。

そして曽我千代子氏からはサークル加茂女の活動が女性を中心にして、アルミ空き缶収集活動、ミニコミ誌の作成と配布による生活情報の共有、活動収入の社会協議会への寄付から始まったことが紹介されました。昨年に竹林の間伐へと活動を拡大したことで、男性会員も増加していること、地域力再生プロジェクトからの資金によって整備機器を揃えたこと、廃竹材の有効活用を狙った竹工房の設立とその独立化についても述べられました。

当日の様子

さらに地域活動を展開させていくにあたって、田中氏からは各主体に横断的な情報共有と緩やかなネットワーク化、地域活動においても経営感覚の必要性が指摘されました。西岡氏からは、活動を認知してもらうために積極的にイベント参加を利用すること、また活動自体が楽しくなる仕組みづくりの重要性に触れられました。曽我氏からは企業ボランティアという形での地域貢献への期待が示されました。

小幡教授から各パネリストに対して、事業化における資金問題についての質問がありました。これに対して、主に会費の徴収や事業収入に加え、いずれも外部からの資金獲得について言及がありました。

当日の様子

また会場から放置竹林を例に舞鶴市における活動のきっかけのポイントについて質問がありました。これに対し西岡氏からは、自らの体験に基づいて、地域の住民が先に行動し、人数を増やしていくことで行政を巻き込んだ活動に発展していくこと、そのためには中期的な目標と地道な実績を重ねていくことを助言として述べられました。田中氏からは、放置竹林が地権者によって解決できないのなら、その地域のコミュニティが議論していくことが大切であること、また地域の住民が動き始めれば、行政は支えていかざるを得ないこと、また大学も巻き込んでそれぞれができる役割を果たしていくことの重要性を指摘されました。曽我氏からは、舞鶴市には女性センターを中心に元気な人がたくさんいるため、活動がうまくマッチングしていけば、放置竹林への対応も広がっていく可能性があること、さらに自分たちのライフスタイルを見直し、自分たちの地域のまちづくりのあり方を作り上げていく必要性を述べられました。

6. 閉会挨拶

当日の様子

見上崇洋教授より、大学、行政、地域住民という三者がそれぞれに対して関わり合いの多い議論があったこと、その中で大学でも特に政策科学研究科、公務研究科においては、地域の現場の課題について、現場の視点で、現場の解決を目指す必要があること、これを通じて大学が地域に貢献できるものも出てくる可能性があること、そしてそのためにも地域の方々と協働していく意欲が表されました。また、今回の内容から、自らの地域の状態を知ることの大切さに触れられ、地域を知ったことで多様な活動が展開し、その中でエコ・ビジネスが生まれる可能性に期待を示されました。

当日の様子

以上のように、地域の主体として住民がクローズアップされるとともに、行政や大学などの役割分担を踏まえた上で、地域共創の新たな展開の一つが示唆されたシンポジウムとなりました。